渡邊 信
Shin Watanabe
全日本実業団少林寺拳法連盟会長
財形信用保証株式会社 代表取締役会長


<略歴>

昭和42年3月  東京大学法学部卒業
 同年  4月  労働省入省
平成13年1月  厚生労働審議官
平成14年8月  辞職
平成17年6月  中央労働金庫理事長
平成23年7月  現・財形信用保証株式会社 代表取締役会長
芝蘭の交わり
− 2014年関東実業団大会によせて −

本日ここに2014年度少林寺拳法関東実業団大会がつつがなく開催されましたことに対し、ご来駕賜りましたご来賓、ご来場の皆さま、拳士諸氏に厚く御礼申し上げます。

私は時折少林寺拳法教範を紐解いて自身の生き方を確認するようにしていますが、ページを開く度に毎度といってよいほど開祖の広い見識と深い知識に圧倒されます。中でも特に興味深いと感じたのは各章の扉のページで紹介されている格言です。そこからこの教範が単なる武道書ではなく、むしろ人生の指南書として書かれたことが伺えます。今回はそれらのうち特に心に響いた3つをご紹介させていただきます。

「財を積むこと千万も、薄芸身に随うに如かず 文籍腹に満つと雖も、行せざれば一?銭に如かず。(中国古諺)」教範451ページ。日本流に言えば文武両道を備えてはじめて有為の人材であるといった意味でしょうか。特に実業団連盟の拳士の皆さんは普段はビジネスマンとして日本経済の成長に貢献し、一旦道衣に袖を通せば一流の武道家に早変わりします。この文武両輪のバランスに私は大変な魅力を感じています。

「伝統は尊重すべきである。しかし伝統にのみ重きを置きすぎ、これにこだわって、新しいことに向かおうとしなければ、人類の進歩はない。(道臣)」教範127ページ。武道といえばとかく保守的なイメージが先行しますが、このように進取の気概に満ちた言葉を開祖自ら伝えるところに少林寺拳法の奥深さを感じます。守るべきは守り、変えるべきは変え、これからも発展していきたいと願っています。

「過ぎし日のことに悔いず、まだ来ぬ前にあこがれず、取り越し苦労をせず、現在を大切にふみしめてゆけば身も心もすこやかである。(釈尊)」教範413ページ。今から2000年以上も前の他国の人の言葉とは思えないほど新鮮です。現代の日本人にこそもっとも当てはまる言葉ではないでしょうか。

こうした言葉に代表されるように、現代に生きる私たちの心に刺さる教えが教範には内包されています。さて「芝蘭の交わり」という言葉があります。芝とは零芝(れいし)を指し、蘭とは藤袴を指していますが、ともに香りの良い草で才能や人徳の優れた人の例えとして使われています。「芝蘭の交わり」とは「お互いが感化し合い、高め合える間柄」の意味です。関東実業団大会はまさに「芝蘭の交わり」の場、日ごろの修練の成果を発揮するとともに、互いに交流を深め大いに人脈を広げていただきたいと思います。

最後となりましたが大会準備に携われられた実行委員並びにスタッフの皆様に敬意を表し、ご挨拶とさせていただきます。