谷口隆志
Takashi Taniguchi
現・関東実業団少林寺拳法連盟名誉会長

(財)中小企業国際人材育成事業団・顧問
元・労働事務次官
一衣帯水から大海原へ (2002年度関東実業団大会挨拶より)

本日は2002年度関東実業団大会にご来駕いただき、誠にありがとうございます。
また、平素より関東実業団少林寺拳法連盟の諸事業に、ご理解ご協力を賜り重ねて御礼申し上げます。
秋の一日、実業団拳士の日頃の修行の成果をご高覧下されば、幸いに存じます。

さて、本年は日中国交正常化30周年にあたります。
顧みますならば、日中両国は有史以来友誼に結ばれ、連綿とした交流の経験を有しております。一時、戦争などの不幸なできごとによって、本来の友好的日中関係が阻害されていました。しかし、平時の積み重ねの素地があったからこそ、今日の正常化が紆余曲折を経て、自然体で進展してきたものと認識しております。今後とも、日中の親善と交流がより進展することを期待する次第であります。

ところで、中国には“井戸を掘った人を忘れるべからず”という言葉がありますが、「正常化」において少林寺拳法連盟が果たしてきた役割に触れずにはいられません。

若き日の開祖が中国で拳法を修行され、嵩山少林寺を訪問して目の当たりにした羅漢練拳図に強い感銘を受け、民族の違い、肌の色の違いをこえた調和と世界の人々の繁栄といった理想境建設の念を胸に、戦後の日本で少林寺拳法を創始されたのは周知のとおりです。

特筆すべきは、昭和48年、縁あって第一回全国実業団連盟演武大会に中国大使館より李連慶参事官他多数を来賓として招待できたことです。この快挙は、戦後における少林寺拳法と嵩山少林寺の交流ひいては日中両国の文化交流の一助となりました。当時、外交官の招待に際して、現在では想像もできない「産みの苦しみ」をともなったことが実業団連盟では今もって語りつがれております。 

私どもは、開祖の提唱は言うに及ばず、歴史の歯車を動かしてきた実業団連盟役員諸氏の奮闘も大きな誇りとするところであります。平和外交・文化交流が進められて30年を迎えておりますが、民間外交の担い手としての少林寺拳法連盟のあり方に頼もしさを感じる次第であります。「平和なくして友好なし、友好なくして平和なし」といいますが、一衣帯水の両国間の人々の平和への願いこそが、あるべき交流の伝統を未来に継承させていくものと信じております。

この機会にもう一つ申し上げたいのは、開祖の遺志を継ぐ宗由貴少林寺拳法グループ総裁によって、新たな平和・友好の動きが始動していることです。

自己確立・自他共楽の理念は、少林寺拳法世界連合(WSKO)を通じて、つとに全世界に発信されていますが、来年5月には創立50周年を迎える「若い根っこの会」(会長・加藤日出男氏)が主催する第35回記念洋上大学に、関係各位のご尽力により、宗由貴少林寺拳法グループ総裁が特別講師として乗船される運びとなりました。

太平洋の大海原のもとグアム・サイパン島をめざす五百人乗り豪華船で、宗総裁が21世紀における平和の理念を説かれ、参加の方々と大いに交流を深める企画です。演武も披露されます。魅力満載のこの催しには、早くも内外から関心が集まっています。皆さんの参加も大いに期待しつつ、前途洋々たる少林寺拳法のさらなる発展と洋上大学の成功を祈念し、私のご挨拶にかえさせていただきたいと存じます。