谷口隆志
Takashi Taniguchi
現・全日本、関東実業団少林寺拳法連盟名誉会長

(財)中小企業国際人材育成事業団・顧問
元・労働事務次官
人生の座標軸を (2006年度関東実業団大会挨拶より)

2006年関東実業団少林寺拳法大会開催に際し、ご繁多のところご来駕頂きましたご来賓・ご来場者各位に主催者を代表し、衷心より御礼申し上げます。あわせて、大会成功にむけ汗を流してくれた実行委員・スタッフ諸氏の労にも敬意を表します。

秋の一日、躍動感あふれる演武の中から、仕事と拳の両立を図る拳士とそれを支える職域の仲間の連帯感を感じ取っていただけるなら、何よりの励みと存じます。

ところで昨今、親殺し、子殺しなど目を覆いたくなるような、こともあろうに家族の絆を家族が破壊する事件が続発しています。本来、何をおいても守るべき家族の生命と尊厳をいともたやすく消滅させてしまう悲劇が連鎖するのはなぜでしょうか。人々の心の荒廃への処方箋は一体どこにあるのでしょうか。
 ”心の時代”と言われる今日、人としていかに在るかが問われています。人々の多くは生活に疲れ人生の目標から遠ざかり、刹那主義に流されているのが現実でしょう。一握りの「勝ち組」の陰で大多数の「負け組」がやり場のない憤りを負っています。まさに”一将功成って万骨枯る”という構造が心の深層をゆがめ、結果、家族の絆を損なうことになってはいないかと危惧するところです。人々が渇望するのは、日々の潤いと、家族の和、仲間の輪でありましょう。競争社会でナンバーワンになるより、借り物ではない真の自分を発揮できる=オンリーワンの自己を目指そうではありませんか。 

幸い、「半ばは自己の幸せを、半ばは他人の幸せを」という教えを心の糧とした拳士の存在が、同僚を助け、周囲のよりどころとされている旨の報告をよく耳にいたします。実業団連盟は少林寺拳法を基礎に、拳士のみならず同僚らが心通える場を提供し、開祖提唱の「自己確立・自他共楽」の理念を職域に普及する実践団体として奮闘しております。職域拳士・同僚の明日への希望を託すため、実業団連盟の一層の発展を望む所以であります。

日本の人口1億2,776万人(05年現在)のうち65歳以上は21%。先進国中1位で、15歳未満は13.6%となり先進国最下位にあることが報道されています。少子高齢化が急速に進展、人生80年時代がますます実感をもって語られるようになり、定年後第2の人生をいかに過ごすかが焦点となっています。勿論、座標軸を持って人生設計を行ってきた諸氏は、定年とともに活用時間が増え心身ともに余裕が生じ、本領発揮の時機到来となります。

いや、座標軸を持っていれば現役時代からあり方が異なり、追い風にも逆風にも一喜一憂しない人間性が陶冶されると信じるものです。釈尊の「己こそ己の寄る辺、己をおきて誰に寄る辺ぞ、よく整えし己こそまこと得難き寄る辺なり。」という教えは万古不易、現代に活きる原点です。

縁あって、私が全日本・関東実業団少林寺拳法連盟の組織を預かったのも、宗道臣開祖の理念に共鳴、日本経済を支え生産と労働を司る職域分野でこれを普及する一助ならんと欲したのがその動機です。実業団連盟は第一回全国実業団連盟大会(1973)に中国大使館より代表の来駕を賜り、当時困難であった日中交流の先鞭を務めた歴史も有しております。

もとより、実業団連盟は、開祖の遺産である理念と技法をもとに人々の生活向上、福祉の拡大に資すことを目標に幸福運動に邁進しております。すべて同心円でつながっている家庭・職域・地域・国・世界の和と輪を一層広げることをモットーに、これからも実業団とともに歩むことをお誓い申し上げ、私の挨拶といたします。