渡邊 信
Shin Watanabe
関東実業団少林寺拳法連盟会長
財形信用保証株式会社 代表取締役会長



<略歴>

昭和42年3月  東京大学法学部卒業
 同年  4月  労働省入省
平成13年1月  厚生労働審議官
平成14年8月  辞職
平成17年6月  現・中央労働金庫理事長
平成23年7月  現・財形信用保証株式会社 代表取締役会長
時代に生きる理念とともに
(2009年 関東実業団大会 ご挨拶より)

関東実業団大会の季節が巡ってきました。皆様の精悍なお姿に再会でき、大変うれしく存じます。ご多忙のさなかご来駕いただきましたご来賓の方々、ご来場の皆様、拳士諸氏に、実業団連盟会長として一言ご挨拶申し上げます。

私は、昨年の大会後に、谷口隆志会長の推薦を頂いて全日本・関東実業団連盟会長に就任いたしました。少林寺拳法の経験は、公務員青春時代に東京大手町は気象庁のコンクリート屋上で短期間手ほどきを受けたのみでありますが、およそスポーツやましてや武道には縁遠い私にとりましても、少林寺拳法は今日まで精神的なバックボーンのひとつとなってまいりました。かれこれ10年くらい前に出張帰りの羽田空港で宗由貴総裁と松木長實東京センター所長(当時)にばったりお会いし、以後何回か関東実業団少林寺拳法連盟の大会を拝見させて頂いたのも、不思議なご縁と感じています。

昨年秋のリーマンショックによって世界経済に激震が走ってから1年がたちました。海外依存度の高いわが国経済は、先進国の中でもとりわけ大きな影響を受けました。雇用面でも多くの派遣社員の解雇にはじまって正社員の解雇に及んでいます。皆さんの中にも直接、間接に影響を受けた方は多いことでしょう。

戦後わが国は荒廃した国土のなかから奇跡的な経済復興を成し遂げてきました。子供心にも感じられたことですが、当時は生活向上に対する国民共通の熱情と頑張りがありました。今はどうでしょうか。わが国は永い間、世界第2位の国内総生産GDPを誇ってきましたが、来年には中国に追い抜かれると報じられています。1988年から2001年までは1人当たりGDPで日本が世界のベスト5から落ちることはほとんどありませんでしたが、2007年には日本はトップのルクセンブルグの3分の1にまで低下し、順位も19位となっています。

もともとわが国には、都市と農村、大企業と中小零細企業との間に大きな格差(二重構造)がありました。これに加えて、現在では正規労働と非正規労働と呼ばれる新たな格差構造が生じました。
後者はすでに全労働者の3分の1に達しています。かつてパートやアルバイトと言えば、家庭の主婦や学生でした。今では多くの青年たちが不安定就労を余儀なくされています。

私たちが目指そうとしている国家とはこのようなものだったのでしょうか。改めて少林寺拳法連盟の皆さんが大切にしてこられた「自己確立・自他共楽・理想境建設」の教えの先見性、すばらしさが実感されます。私がいま仕事をしています労働金庫は、戦後の混乱のなかで自らの金融機関を持とうという理想にもえた人たち、労働組合や生活協同組合の人たちの運動のなかから結成されたものです。その理念に「共生社会の実現」を高らかに謳っています。人々が助け合い、尊敬しあって生きていける社会の建設です。何と通じあっていることでしょう。少林寺拳法や労金のような力が結集されれば、この国の有り様も必ず大きく変わっていくのではないでしょうか。

本大会を機に少林寺拳法実業団連盟がさらに発展していくことを祈念しています。最後になりましたが、大会実行委員、各スタッフの大会開催までのご労苦に深甚なる感謝を申し上げます。


2010年6月掲載